近年、レンタルスペースは会議やイベントの場としてだけでなく、副業や新しいビジネスの選択肢としても注目を集めています。
「空いている部屋を貸すだけ」で始められる手軽さと、需要が年々拡大している成長市場という背景が、多くの人を惹きつけているのです。
本記事では、レンタルスペースの基本的な仕組みや代表的な種類、注目される理由、そして副業・ビジネスとしての可能性までをわかりやすく解説していきます。
レンタルスペースとは何か
レンタルスペースとは、空いている部屋やお店、オフィスなどを時間単位で貸し出す仕組みのことです。
利用する側は「必要なときに、必要なだけ」使えるのが大きな魅力です。たとえば会議や打ち合わせといったビジネス利用はもちろん、ダンスやヨガの練習、動画や写真の撮影、誕生日会や女子会といったイベント利用まで、様々なシーンで使われています。
貸す側にとってもメリットは大きく、空き部屋や遊休スペースを収益につなげられる点が注目されています。
借りる人は「気軽に使えて便利」、貸す人は「眠っているスペースをお金に変えられる」という両方のニーズがうまくかみ合っているからこそ、ここ数年で利用が一気に広がってきたサービスだといえるでしょう。
最近はその収益性の高さから、個人の副業や企業のビジネスとして、「空き部屋を貸す」のではなく、最初からレンタルスペースとして物件を借り、運営している方も増えています。
レンタルスペースの種類
レンタルスペースといっても、使い方や設備によってさまざまな種類があります。ここでは代表的なタイプをご紹介します。
実際にはもっと多様な形態がありますが、副業やビジネスとして始めやすい種類を中心に見ていきましょう。
貸し会議室・セミナールーム
会社の会議や商談、就活の面接、勉強会などに利用される定番タイプのレンタルスペースです。
ホワイトボードやプロジェクターが備え付けられていることも多く、ビジネスや学びの場として多く使われています。
机・椅子・Wi-Fiなど最低限の設備で始められるため、初期投資が少なく副業からでも参入しやすいジャンルです。利用者層はビジネスマンや学生が多く、平日昼間でも一定の需要があります。
レンタルスタジオ(ダンス・ヨガなど)
ダンスやヨガの練習、フィットネスや演劇の稽古などに使われるレンタルスペースです。
大きな鏡や音響設備が整っていることが多く、個人でのダンスの練習や、フリーのヨガやダンスインストラクターがスクールの会場として多く利用されています。
初期費用はやや大きめですが、リピーターがつきやすく稼働率が高いため、軌道に乗れば収益性も高いジャンルです。
撮影スタジオ・ハウススタジオ
写真や動画の撮影用に作られたレンタルスペースです。
おしゃれなインテリアや自然光の入る空間など、SNS映えする環境が整っています。
YouTubeの撮影や商品撮影、コスプレ撮影など幅広いシーンで活用されています。
家具や照明を工夫すれば小規模から始められるため、近年副業として人気が高まっているジャンルです。
パーティールーム
誕生日会や女子会、料理会などを開くときに便利なスペースです。カラフルなインテリアが特徴の部屋や、調理器具がそろったキッチン付きの部屋などもあり、友人や家族と集まるのにぴったりです。
利用が集中しやすいのは年末年始や春のシーズンで、とくにイベント需要が高まります。一方でお酒の席として使われることも多く、他のレンタルスペースに比べて部屋が荒れやすい傾向があります。
そのため、運営する場合は利用後の清掃や備品のチェックなど、細かなメンテナンスが欠かせません。そのぶん繁忙期には高い稼働率と収益が期待できるため、リスクとリターンの差が大きいタイプのレンタルスペースといえるでしょう。
レンタルサロン(美容系)
ネイルやマッサージ、ヘアメイクなど、美容サービスを受けられるレンタルスペースです。施術者がサロンを持たずにサービスを提供できる形で、利用者は手軽に施術を受けられるのが魅力です。
専門設備が必要ですが、ワンルームでも運営できるため個人オーナーも多いジャンルです。美容系の知識がある方が運営する場合は特に相性が良いでしょう。
レンタルスペースが注目される理由
近年、レンタルスペースはビジネス利用から趣味・イベントまで幅広く利用されるようになり、利用者・オーナーの双方から注目を集めています。
ここでは「利用者目線」と「オーナー目線」の両方から、その理由を見ていきましょう。
利用者目線の理由
レンタルスペースがここ数年で一気に広まった背景には、利用者にとっての大きなメリットがあるからです。ここでは、その代表的なメリットを具体的に見ていきましょう。
料金が手頃で気軽に使える
レンタルスペースの最大の魅力は「必要なときに必要な時間だけ借りられる」ことです。
1時間単位で利用できるため、長期契約や大きな初期費用は不要です。
たとえば30分〜1時間だけ会議をしたい、週に1回だけヨガの練習をしたい、といったシーンでも気軽に利用できます。
カフェやホテルラウンジを利用するよりもプライベート感があり、貸切で集中できる点も人気の理由です。
実際に「自宅だと散らかっていて来客を呼びにくい」「カフェでは周囲の音が気になって打ち合わせに集中できない」といった悩みを持つ人にとって、レンタルスペースは理想的な選択肢となっています。
多様なシーンに対応できる
もうひとつの大きな特徴は「使い道の幅広さ」です。
ビジネス利用なら会議やセミナー、採用面接、商談に使えますし、プライベート利用では女子会や誕生日パーティー、料理会、さらには推し活や撮影会など多彩なシーンで利用されています。
特に最近は、動画配信やSNSコンテンツの撮影に利用する人も増えており、インフルエンサーや個人クリエイターからの需要も拡大しています。
こうした利用シーンの多様化によって「ちょっとした用事でも気軽に借りる場所」として定着しつつあるのです。
社会背景による需要拡大
レンタルスペース需要を押し上げた大きな要因のひとつが社会的な変化です。
コロナ禍をきっかけにリモートワークやオンライン会議が普及し、自宅以外で静かに作業できる場所を求める人が増えました。
また、オンライン配信や動画撮影の需要も一気に拡大し、自宅では環境が整わない人たちが「背景が整っていて映えるスペース」をレンタルするケースも増えています。
さらに、個人が主催するワークショップや少人数イベントも活発化しており、「場所を持たない人でも気軽に活動できるインフラ」としてレンタルスペースが注目されているのです。
オーナー目線の理由
利用者の需要が高まっていることは、スペースを貸し出すオーナーにとっても大きなチャンスです。
これまでは「マンション経営」や「駐車場経営」などが代表的な不動産活用とされてきましたが、近年はレンタルスペースが新たな選択肢として注目されています。その背景には、次のような理由があります。
市場拡大によるチャンス
レンタルスペース市場はここ数年で急速に拡大しています。
もともとは都市部でのビジネス利用(会議・研修)が中心でしたが、今では撮影やヨガ教室、女子会や推し活イベントまで、多様なシーンで利用されています。
特にコロナ禍以降は「自宅以外で安心して集まれる場所」や「自宅ではできないオンライン配信や撮影の場」として需要が一気に伸びました。
この多様化により、利用者層も会社員や学生、フリーランス、個人クリエイターなど幅広くなり、特に都市部では「時間単位で場所を借りる」という文化が定着しつつあります。
かつては「レンタルするのは特別な時だけ」という認識だったのが、今では「気軽に借りられる便利な選択肢」として日常的に使われるようになったことが、オーナーにとって追い風になっています。
集客や運営インフラの整備
需要が広がっただけでなく、それを支える仕組みも大きく進化しました。
たとえば、スペースマーケットやインスタベースといったポータルサイトに掲載すれば、個人オーナーでもすぐに利用者に見つけてもらえる環境が整っています。
また、予約から決済までを自動化できるシステムも普及し、利用者はスマホから24時間いつでも予約可能、オーナーは手作業でのやり取りや現金管理に追われる必要がなくなりました。
以前は「集客が難しい」「管理が手間」という理由で参入をためらう人も多かったのですが、こうしたプラットフォームやシステムの普及によって、そのハードルは大きく下がっています。
これは不動産業界全体で見ても特異な点であり、個人が小規模な投資で参入できる環境が整ったことを意味します。
副業・働き方の変化
社会全体の働き方の変化も、レンタルスペースの需要を押し上げています。
会社員の副業解禁が進み、「空き時間や空きスペースを収益化する」という発想が以前より受け入れられやすくなりました。
リモートワークの普及によって「自宅では作業しにくい」「集中できる環境がほしい」といった声も増え、作業場所としてレンタルスペースを利用するケースが増加しています。
さらに、YouTubeやTikTokなど動画配信の広がり、インフルエンサーやフリーランス人口の増加も追い風になっています。
特に「おしゃれな背景で撮影したい」「静かな場所で配信したい」といったニーズは、従来のカフェや自宅では満たしにくいため、レンタルスペースがその受け皿となっています。
こうした社会的な流れそのものが、レンタルスペース運営を後押ししているのです。
副業やビジネスとしての可能性
レンタルスペースは、単に「空き部屋を貸す」だけの仕組みにとどまりません。
副業として小さく始められる一方で、仕組みを工夫すれば安定した収益モデルを構築でき、将来的には事業の柱に育てることも可能です。
ここでは、レンタルスペースを副業やビジネスとして考える際の具体的な可能性を整理してみましょう。
初期費用が低く始めやすい
不動産ビジネスと聞くと、多額の投資が必要というイメージを持たれる方も多いでしょう。
しかしレンタルスペースの場合は、飲食店や美容院のように高額な内装工事や専門設備を整える必要はありません。
小規模な会議室であれば、机と椅子、ホワイトボード、Wi-Fi環境を用意するだけで十分に利用ニーズがあります。
もちろん物件を新たに借りる場合は敷金・礼金などで数十万〜100万円ほどの初期費用は必要ですが、それでも飲食店開業で数百万円〜数千万円かかるのと比べれば、圧倒的に低リスクです。
自宅の空き部屋を活用するならさらに負担は減り、副業として挑戦しやすい環境が整っています。
安定収益につながる仕組み
レンタルスペースの収益を安定させるカギは「定期利用」と「リピーター」です。
たとえば、フリーのヨガ講師が毎週同じ時間にスタジオを借りれば、月に数万円の固定収入になります。
企業が月1回の定例会議で継続的に利用するケースも多く、こうした利用者を獲得できれば、安定したベース収益を築くことができます。
また、イベント利用や撮影利用など単発のニーズも多く、一度使った人が「次もここにしよう」と繰り返し選んでくれるケースが珍しくありません。
特に立地や清潔感、使いやすさに配慮すれば、自然と口コミやリピーターが増え、広告費をかけずに稼働率を高めることも可能です。
パーティルームなど、定期的なリピートに繋がりにくいジャンルもあるので、ジャンルによってどのような特徴があるのかはしっかり把握しておきましょう。
不労所得に近く、副業でも続けやすい運営スタイル
会社員や子育て中の人が副業として取り組みやすいのもレンタルスペースの魅力です。
予約受付はオンラインシステムが自動で行い、清掃や備品補充は代行サービスを利用したりすれば、オーナー自身が現場に常駐する必要はほとんどありません。
実際に「平日は本業を優先し、週末だけスペースを見に行く」「月に数時間の点検だけで回している」というスタイルのオーナーも少なくありません。
自動化・外注化の仕組みを整えれば、オーナーの関与時間を大幅に減らすことができ、副業として無理なく継続できます。
もちろん完全放置は難しいですが、「ほとんど自動で収益が積み上がる」状態をつくれるのは、他の副業にはない大きな魅力です。
本業を持ちながら副収入を得たい人や、将来に備えて安定収益の柱を作りたい人にとって、理想的なモデルとなり得ます。
将来の拡張性(多店舗・他事業との連携)
レンタルスペースは1部屋から始めても、需要を見ながら複数展開へと広げることができます。
人気のあるエリアや物件タイプが分かれば、同じ仕組みを横展開して多店舗経営を目指すことも可能です。
複数のスペースを同じブランドで展開すれば、認知度や信頼感が高まり、予約数をさらに伸ばせる効果も期待できます。
また、レンタルスペース自体を基盤にして、新しいビジネスへ発展させることもできます。
例えば、イベントやセミナーを主催して自ら集客する、飲食サービスと組み合わせてパーティー利用を強化する、スクール事業やコワーキングと連携させる、といった展開です。
副業からスタートしても、事業拡大や本業化へのステップにつなげやすいのが大きな特徴といえるでしょう。
レンタルスペース運営で意識すべきポイント
レンタルスペースは「少ない初期費用で始められる」「不労所得に近づける」という魅力がありますが、実際に運営をスタートさせると意外な課題に直面することも少なくありません。
ここでは、これから始める人が失敗を避け、長く続けられる運営を実現するために押さえておきたいポイントを解説します。
物件選びと立地の重要性
レンタルスペースにとって最も重要な要素のひとつが「立地」です。駅から徒歩5分以内かどうか、周辺に人が集まりやすい施設があるかどうかで稼働率は大きく変わります。
たとえば会議室やセミナールームならオフィス街、パーティールームや撮影スタジオなら若者が集まる繁華街が適しています。逆に、需要と立地が噛み合わないと、どれだけ内装を工夫しても予約が入りにくくなってしまいます。
また、競合調査も欠かせません。同じエリアで同ジャンルのスペースが多すぎると価格競争に巻き込まれやすくなります。
まずはポータルサイトで「同じエリア・同じ広さ・同じ用途」で検索し、相場やレビューをチェックしておくことが重要です。
清掃・メンテナンス体制を整える
利用者の満足度を左右するのは「価格」だけではなく「清潔さ」です。床にホコリが残っている、トイレが汚れている、備品が壊れているといった小さな不備でもレビュー評価は大きく下がります。
特にパーティールームは利用後にゴミや汚れが残りやすく、スタジオは床や鏡にダメージが出やすい傾向があります。これを放置すると稼働率が下がり、最悪の場合「汚いから二度と使わない」とSNSで拡散されるリスクもあります。
清掃はオーナー自身が行う方法もありますが、パーティルームなど高頻度で清掃が必要なジャンルは外注サービスの活用が現実的です。
ただし、外注に任せきりにするのではなく、月に1〜2回は自分でもチェックして「清掃の質」や「備品の状態」を確認することが大切です。
利用ルールと契約条件の明確化
トラブルの多くは「ルールの曖昧さ」から発生します。
飲食の可否、大音量の利用が可能か、ゴミは持ち帰りか回収サービスを利用するのか――これらを明文化せずに貸し出すと、利用者とオーナーの間で認識のズレが生じ、トラブルに発展しかねません。
そのため、予約時に必ず「利用規約」を提示し、利用者が確認した上で同意する仕組みを整えておきましょう。特に定期利用の場合は、口約束ではなく契約書などエビデンスを残すようにすると安心です。
(※筆者の場合はメールで合意頂き、それをエビデンスにしています)
また、ルールは「守らせるだけ」ではなく「利用者が快適に使えるように整えるもの」という視点も必要です。制限をかけすぎると予約が入りにくくなるため、バランスを考えながら設定するのがコツです。
集客チャネルの活用
オープン直後はまずポータルサイトを使って集客するのが一般的です。
ポータルサイトは利用者数が多く、自社でSEO対策や広告配信をしなくても自然と予約が入る仕組みが整っています。ただし手数料が約30%とかなり高く、長期的には利益率をかなり圧迫します。
そこで重要になるのが「直予約」の導線づくりです。自社で予約できる公式サイトを立ち上げ、Googleマップに登録し、SEO対策やSNS(特にInstagram)で発信すれば、ポータルサイトに頼らない集客チャネルを持てます。
特にInstagramは「映える写真」が拡散されやすく、スタジオやパーティールームの集客と相性抜群です。
また、利用者にリピートしてもらう仕組みづくりも重要です。初回利用時に自社の予約サイトを認知してもらい、そこからの予約が一番安いという事を認知してもらえば、次回以降は直接予約してもらえる確率が上がります。
自社予約をいかにするかが安定してレンタルスペースを運営するカギといっても過言ではありません。
利益率とコスト感覚を持つ
レンタルスペースは売上がそのまま利益になるわけではありません。
家賃、光熱費、ポータル手数料、清掃費、備品購入費などを差し引くと、実際に手元に残る利益は売上の半分以下になることもあります。
例えば月30万円の売上があっても、家賃10万円、手数料8万円、清掃費3万円、その他雑費2万円を引けば、実際の利益は7万円程度というケースもあります。数字を冷静に見て「どのくらいの稼働率で黒字化できるか」をシミュレーションしておくことが必須です。
また、パーティールームのように繁忙期と閑散期の差が大きいジャンルは、シーズンを通しての収益を見積もる必要があります。繁忙期だけの数字を見て楽観的に判断すると、オフシーズンに赤字を抱えるリスクが高まりますので注意しましょう。
まとめ
レンタルスペースとは、空き部屋や店舗を時間単位で貸し出す仕組みで、会議やセミナーから趣味の集まり、撮影やパーティーまで幅広い用途に活用されています。
利用者にとっては「必要なときに必要なだけ使える」手軽さがあり、オーナーにとっては「眠っているスペースを収益化できる」点が大きな魅力です。
市場は年々拡大しており、ポータルサイトや予約システムの普及、社会全体の副業ブームも相まって、今まさに追い風が吹いている分野といえます。初期費用も比較的抑えやすく、副業からでもスタートしやすい点も特徴です。
もちろん、物件選びや清掃体制、ルール作り、集客方法など、意識すべきポイントは数多くあります。しかしそれらをきちんと整えていけば、定期利用やリピーターを獲得して安定した収益につなげることが可能です。
さらに、直予約の仕組みを強化し、複数店舗へと展開することで、将来的には事業の柱として成長させることもできるでしょう。
レンタルスペースは「気軽に始められる副業」でありながら「大きく育てられるビジネス」でもあります。興味を持った今こそ、まずは小さく一歩踏み出してみることが、将来の大きなチャンスにつながるはずです。
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